■コマ大数学科175講:ベルヌーイ数

関東圏では、放送日が月曜深夜に移っての初回。スタジオもほんの少し様変わりした「たけしのコマ大数学科」

問題:1辺の長さ1の正三角形を底辺とする高さ1の正三角柱がある。それを隙間なく並べて高さ1の正三角柱の台を作る。図のように台を10段積み上げたとき、台全体の体積を求めなさい。

図(1)

上から1段目は1個、2段目の台は一辺が「3」になるように一辺「1」の正三角柱を隙間なく並べる。3段目の台一辺は「5」……というように、10段目まで積み上げる。図は、5段目まで積み上げたところ。「Shade」を使っても、図を描くのは、かなり面倒だ。爺には、これが限界だ><;

コマ大数学研究会の面々は、幅5cmに切った紙を折り、セロテープで止めて正三角柱を作る(上面と底面はないけどね)。これを図のように10段まで重ねたのだから、頭が下がる思いだ。結局、正三角柱の数を数えると、1330個だった。

コマ大数学研究会の解答

図(2)

一辺が「5cm」の正三角形の高さは「約4.33cm」になる。計測誤差としては小さいものの、1330個も集まると積り積って大きくなっちゃう。

マス北野&ポヌさんの解答

図(3)

一辺が「1」の正三角形なので、高さは「√3/2」だ。正三角柱の体積は「√3/4」になる。段が増えるごとに台の一辺は「3・5・7…」と増えるので、正三角柱の数は「3^2・5^2・7^2…」と増える。合計を(たぶん)電卓で計算して答えが出た。

木村美紀&山田茜さんの解答

図(4)

台の一辺は「1・3・5…」と増えていくので、木村美紀&山田茜さんの東大生チームは、シグマを使った式を立てた。総和の公式をつかって正三角柱の個数を求める。べき乗を含む、総和の公式は、高校の「数B」で習うみたいだ。

ガスコン爺の検算

図(5)

いちおう、「Maxima」を使って検算してみた^^;

中村亨センセの「美しき数学の時間」

今回の問題は、比較的簡単だったので、マス北野&ポヌさんペア、木村美紀&山田茜さんペアとも正解。コマ大フィールズ賞を分け合った。残念ながら、コマ大数学研究会は、誤差の問題はあるが、正解と言えるものの、コマ大フィールズ賞は逃した。

三角形の面積は、「底辺×高さ÷2」で求めることができるが、三辺の長さがわかっている場合は「ヘロンの公式」を使っても求めることができる。

図(6)

この「ヘロンの公式」が便利なところは、いびつな三角形であっても、各辺の長さがわかれば、面積を求めることができること。

二乗計算は、電卓を使えば、計算できるし、筆算でも二桁程度なら、そんなに苦にならない。でも、「インド式計算法」を使うと、もっと簡単に計算できるよ……という話。

図(7)

たとえば、「17」の二乗は、「17」に1桁目の「7」を足して、「24」の10倍、「240」に「7×7=49」を足して、「289」という具合。これなら、電卓がなくても、計算が速くできる。

さて、今回の講義の演題は「ベルヌーイ数」。東大生チームは、べき乗を含む「総和の公式」を使って、問題を解いたが、これが、「ベルヌーイ数」に関係しているという。

図(8)

ヤコブ・ベルヌーイ(Jakob Bernoulli:1654~1705年)は、自然数の総和「1+2+3…」だけでなく、「1^n+2^n+3^n…」といったべき乗の総和を考えた。10乗くらいまで計算したらしいんだけど、ある規則性を発見したんだよね。ぱっと見ただけでも、展開式の初項の分母とnの乗数が同じだったり、乗数が奇数(1を除く)のときは、「×n」という形にならない。で、赤字で書いた数が「ベルヌーイ数」と呼ばれるもの。

C175_09

ベルヌーイは、「1^c+2^c+3^c…+n^c」というべき乗の総和を一般的な式で書くことに成功した。ベルヌーイ数は、遺著「Ars Conjectandi」(1713年刊行)に書かれているんだけれど、ほぼ同時期に、日本の算聖、関孝和(1642~1708年)も同じことを考えていた。遺稿集「括要算法」全4巻は、1712年に刊行された。関孝和も10乗の総和を計算して、ベルヌーイ数のB0,B1,B2…を一級、二級、三級の「取数」と呼んでいた。「Ars Conjectandi」も「括要算法」も互いに没後、発表されたものだが、発表年からいったら関孝和の方が1年早い。これからは、敬意を表して「関・ベルヌーイ数」と呼ぼう。

で、「関・ベルヌーイ数」が、なぜ重要かと言えば、いろんな数式にひょっこり顔を出すらしいのだ。

図(10)

上は、リーマンのゼータ関数の負数の値に「関・ベルヌーイ数」が登場する。「Bm」というのがそうで、たとえば、ζ(-1)=1+2+3……(これって無限じゃね。by中村センセ)=-(B2/2)=-(1/12)。関・ベルヌーイ数(B2)=(1/6)だから、-(1/6)/2=-(1/12)となるわけね。

ガスコン爺のどーでもいい話

今回の問題、スピードでは、マス北野&ポヌさんに軍配が上がり、解法の美しさでは、木村美紀&山田茜さんに軍配……というわけで、コマ大フィールズ賞は、両チームに与えられた。コマ大数学研究会の正三角柱を1330個作った労力は報われず;; 問題の難易度は、それほど高くはなかったが、中村亨センセの講義の難易度は高かった。

爺がつまづいたのは、関・ベルヌーイ数の(B1)は、-(1/2)なんだけど、べき乗和の公式を展開すると、最後の項は「+(1/2)n」になる。「なんでそーなるの?」と悩み、ネットで調べたが「すっきり」した解決策は見つからず。ただ、爺には、わからないながらも、関・ベルヌーイ数の生成規則を解説しているページを見つけた。

図(11)

※出典:ベルヌーイ数の生成規則(数学研究ノート
http://homepage3.nifty.com/y_sugi/gf/gf11.htm

≪参考≫
続・数学~その遙かなる風景・日本~(桜井 進)
(第15回)数学大国江戸の日本~算聖関孝和

※たけしのコマ大数学科の「過去問題」はこちらから。
コマ大数学科:2009年度全講義リスト
コマ大数学科:2008年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2007年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2006年度全講義リスト

コマ大数学科DVD-BOXガイド


“■コマ大数学科175講:ベルヌーイ数” への2件の返信

  1. 1^c+2^c+3^c…+n^c=Σ~ のΣの上はnではなくcでしょう。(細かいところですが)

  2. タマさん、間違いの指摘ありがとうございます。
    指摘されなければ、たぶん、ずっと気付かなかったと思います><;
    数式の図版を修正しました。

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