■コマ大数学科154講:ポリアの壺

 ジョージ・ポリア(George Polya:1887~1985年)は、数学の問題解決の手法や、数え上げ理論などを発表した、ハンガリー生まれの数学者らしい。彼の考えた「ポリアの壺」とは……「たけしのコマ大数学科」

問題:5個の白球と3個の赤球が入った壺から、1個ずつ球を取りだし、以下の条件のとき、4回目に白球が出る確率を求めなさい。
≪条件≫
取りだした球が白球ならば、その白球と新たにもう1個の白球を加え壺に戻す。
取りだした球が赤球ならば、その赤球と新たにもう1個の赤球を加え壺に戻す。

 爺が作成したFlashでは、壺の代わりに福引などで使われるガラガラ(抽選機)とした。画面上部に表示されている、白球と赤球が抽選機の中に入っている球の個数。抽選機をクリックすると、その中からランダムに球をひとつ取りだす。4回目で出た球の色が白ならば「白玉の数」としてカウントされる。

 毎回、過酷な検証ロケを行っているコマ大数学研究会だが、番組が150回を超えたということで、今回はご褒美の慰安ロケ。コマ大数学研究会ご一行様が訪れた先は、大田区にある「蒲田温泉」。蒲田温泉の特徴は、「黒湯」と呼ばれる、真っ黒なお湯。この中に白球と赤球を沈め、ひとつずつ取り出す。温泉にたっぷり浸かったあとは、更衣室でコーヒー牛乳と、フルーツ牛乳。この瓶の底にも、白丸のシールと赤丸のシールが貼ってあった。最後は宴会場で、コーヒー牛乳の入った、おちょこを飲み干す。もちろん、おちょこの底にも白と赤の印が……。こうして、100回の検証を行い、確率は、「61/100」。61パーセントという答えになった。

 マス北野は、場合分けし、球の数に注目して、樹形図を描いた(※それぞれの場合の球の個数は、中村センセの表を見てね)。制限時間をギリギリまで使い切り、計算したが、確率計算に手こずってしまった。答えは「13/22」。

 衛藤樹さん、伊藤理恵さんの東大生チームも、4回目に白球を取り出すまでの過程をすべて場合分けして、数え上げた。

東大生の解答(1)

 白球、赤球のどちらを選んでも、球の数は、1個ずつ増えるので、分母はひとつずつ増え、すべての場合に共通。それぞれの確率を計算すると、赤球の出現順には関係なく、1~3回目で赤球を何個取りだしたか、その個数によって、同じ確率になるものがある。4回目で白球を取りだす確率は、これらをすべて足し合わせたもの。

東大生の解答(2)

 東大生の答えは「5/8」。さらに、東大生は、2回目、3回目で白球が出る確率を計算したが、同じく「5/8」になることに気がついた。

中村亨センセの「美しき数学の時間」

 まず、マス北野や東大生と同じく、取り得るすべての状況を場合分けして、数え上げてみる。球数の変化と、1回目、2回目、3回目の期待値は、以下のようになる。

美しき数学の時間(1)

 それぞれの場合に4回目に限ると「白球」を取りだす期待値は、11個の球の中に白球が何個含まれているかで決まるが、問題文にあるように4回目で「白球」を取りだす確率は、1回目の確率×2回目の確率×3回目の確率…と、その状況に至る確率も掛け合わせなければならない。そのとき、東大生が気づいたように、(白・赤・赤・白)、(赤・白・赤・白)でも、出現順に関係なく、3回目の時点で、白球、あるいは赤球を何回引いたかによって確率が決まる。そして、すべての場合での確率は、個別の場合の確率を足し合わせたものになる。計算方法は、東大生の場合とあまり変わらなかったので省略。
 正解は「5/8」で、東大生がコマ大フィールズ賞を獲得。

 「5/8」を小数で表すと「0.625」。コマ大生の「61%」という答えは、かなり近い数字だ。コマ大生が答えを発表したとき、中村センセに「まだ、回数が足りませんね、1万回はやってもらわないと…」と言われてしまった。「中村センセ、そんなご無体な~」と叫んだのは、コマ大生だけでなく、爺も同じ。爺が作成した冒頭の「ガラガラポン」のFlashでは、コマ大生と同じ100回の検証を試みるのも大変。そこで、アニメーション部分を省き、結果だけを表示するFlashを作成した。

 それでも1000回が限度だけど><; 今回の問題は、4回目で白球が出る確率を求めるわけだが、これを1~10回目まで設定できるようにした。

 「ポリアの壺」が不思議なところは、何回目だろうが、白球を取りだす確率を計算すると、同じ確率になること。

 これは、最初に壺の中に白球が1個、赤球が1個入っている状態から考えるとわかりやすい。最初に白球、あるいは赤球を引く確率は、それぞれ(1/2)。白球を引いた場合、新たに白球を1個壺に入れるので、壺の中は白球2個、赤球1個になる。この状態で、白球を引く確率は、(2/3)になる。しかし、1回目で赤球を引いた場合、2回目は、壺の中が白球1個、赤球2個になっているので、白球を引く確率は(1/3)だ。

 結局、(1/2)*(2/3)+(1/2)*(1/3)=(1/2)となり、確率は変わらない。

 以下、中村センセの板書きを丸写し。

美しき数学の時間(1)

※番組、戸部アナのオープニングトークのバックで、「ジョージ・ポリア(1789~1887)ハンガリーの数学者」と紹介されていたけれど、これは何かの間違いだと思う。1923年に論文を発表しているわけだし^^;

・Wikipedia

※Pencil Missaileは、[SPACE]キーでも発射できるよ^^;

※コマネチ大学数学科の「過去問題」はこちらから。
コマ大数学科:2008年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2007年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2006年度全講義リスト


“■コマ大数学科154講:ポリアの壺” への4件の返信

  1. 番組後一般化を考えたのですが(とても長くなるので詳細は省きます)、これは二項定理に似ていますね。
    解答は、樹形図の数値が正確に書けず撃沈しました。ここの所疲れ気味の身には、深夜の数学は堪えます。(見苦しい言い訳)

  2. こんにちは。
    >「ジョージ・ポリア(1789~1887)ハンガリーの数学者」
    1887~1985の間違いですね。
    京大の入試問題がどうだったのかが気になりました。

  3. たけしのコマ大数学科 #152 「ポリアの壺」

    たけしのコマ大数学科#152
    (旧名称・たけしのコマネチ大学数学科)
    フジテレビ 2009年10月15日 深夜OA
     
    今回のテーマは、
    「ポリアの壺」
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  4. 2回目に白球が出る確率を暗算で出して
    1回目と変わらなかったので、何回目でも
    同じだろうと勘で答えたら正解しました。
    数学的帰納法で証明ができるのではないかと
    思いましたが試みてません。
    おそらく、それぞれの試行で足される個数が
    決められていたら、ずっと同じ確率では
    ないかと思います。
    いずれ、計算してみたいと思います。
    例:1回目は1個、2回目は10個、3回目は100個・・・
      4回目は1から10のランダム抽選した個数を加える

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