■平成教育学院:マス北野の算数

9月26日放映の「熱血!平成教育学院SP」で出されたマス北野の問題。これが、マイクロソフト社の入社試験問題だったというので、取り上げてみた。

問題:200匹の魚のうち、99%はグッピーです。98%をグッピーにするには、何匹のグッピーを取り除けばいいでしょう?

※制限時間は1分。日能研に通う小学生65%が正解した問題。

3時間のスペシャル番組で、最優秀生徒となった、石原直純くんに出題された。石原直純くんは、10秒とかからず、「100」と書いて正解。シンガポールへの短期留学を獲得した。

図(2)

先日、テレビを見ていたら、簡単な分数の計算を大学生が悉く間違えていた。「分数ができない大学生」が出版されたのは、1999年、あれから10年余り経ったが、状況はあまり変わりないように思う。

この事柄だけを見たり、聞いたりすると、街頭で分数の問題を出された大学生は、ずっと大学生になるまで、分数計算ができなかったと思いがちだが、多くは、小学校高学年のときは、分数計算ができたのだ。それが「やり方を忘れてしまって、今ではできない」と答える人が多いという。

「分数ができない大学生」の著者のひとり、芳沢光雄氏が「数学的思考法」の中で、「『分数ができない大学生』というタイトルは、あくまで(出版社の)営業上のものであって、本の主旨は『数学的なものの考え方の重要性』を訴えることにあった」と書いている。

「数学的思考法」にも登場する、典型的な分数計算の問題だが、あなたは正しく答えることができるだろうか。

図(3)

※参考:我が息子 数学へのあゆみ(とうさんへの問題)

小学校では、このように習ったはず……。

図(4)

さて、どこがどう違うのか、なにが間違っているのか、分数を習いたての小学生にもわかるように説明してほしい。

過去記事「10歳の壁」でも、書いたけれど、小学校高学年になると、算数の授業についていくことのできない児童が増える。

小島寛之センセは『世界を読みとく数学入門』の中で「子供が算数嫌いになる、第1のつまずきの原因は分数にある」と書いている。分数がややこしいのは3重の意味を持っているからだ。1つは、分数は割り算を表している。これにより、(1/3)のように0.33333…と続く循環小数も整数の比として表すことができる。そう、分数には(1:3)という「比」の意味もある。もうひとつは「比」とも関係するが、「割合」という意味だ。こちらは、具体的な「量」を表している。私たちは、日常の中で、3つの意味合いをなんとなく使い分けている。

上の金魚鉢の問題で言うと、それぞれの金魚鉢について、赤い金魚が占める「割合」は正しい。割合とは、赤い金魚の数÷全体の数(等分数)となる。

ところが、(1/2)+(1/3)という計算をするときは、個別の「分母(等分数)」が違うので、そのまま足し合わせるわけにはいかない。共通の分母にして、条件を揃え、同じ土俵に上げなければ、計算できないのだ。足し合わせる分母を揃えて、共通の分母を得ることを「通分」という。

(1/2)と(1/3)を、それぞれ、割り算して小数にしてしまえば、(0.5)と(0.33333…)となり、「小数」という同じ土俵上で、そのまま足し合わせることができるけれど、割り切れない分数は、循環小数になってしまふ。

爺は今、『虚数の情緒』(吉田武/著)という、1000頁もある本を読んでいる途中。じつは、小飼弾氏のブログ「404 Blog Not Found:伝われ、i – 書評 – 虚数の情緒」を見て、即刻クリックして、アマゾンで注文してしまった本。小飼氏の書評どおり、とにかく厚くて、熱い本だ。1000頁の厚さはズシリとくるが、それにも増して、著者の文章からほとばしる熱さは、今年の猛暑どころではない、やっと秋風が吹き涼しくなったので、少しずつ読み始めた次第^^; 

分数の足し算、引き算は、「通分」を理解できれば、計算できる。では、吉田武氏は、どのように「通分」の仕組みを説明しているのだろうか。

図(5)

あなたは、この説明をどのように感じただろうか。分数の足し算の方法として、分母どうしを掛ける(分母を通分)、分子にも、分母に掛け合わせた同じ数を掛ける。という説明(分数の足し算の方法)と一緒、同じじゃんと思っただろうか。確かに結果的に同じことを言っている。でも、爺には、なぜ、そーなるのか。なぜ、それが可能なのか、その意味(本質)を説いているように思うんだよね。

分母、分子に同じ数を掛けても変わらない、両辺に同じ数を掛けても、変わらないということを担保すること(意味を理解して自分の中に落とし込むこと)が、すごく重要なことだと、爺は思う。意味がわからないまま、言われるままに分数計算のやり方だけを覚え、機械的に計算する……こんな強制された算数はつまらないと思う。とゆーか、つらい。中学に進むと、「算数」は「数学」になり、文字式の変形という操作の意味が、ますます、わけがわからなくなって、数学嫌いの生徒を生み出してしまうんじゃなかろうか。

「少年老い易く、学成り難し」。すでに爺の私が言うのも失笑ものだが、爺だから、つくづく実感する言葉だ><;

だから、小学生には「はじめまして数学」(吉田武/著)、中学生になったら「虚数の情緒」(吉田武/著)を読んでほしい……と言いたいところだが、中学生が読むには、価格もさることながら(1000頁の本で、本体4300円+税は、発行部数を考えると、けっして高くはないのだが……)、著者の熱き思いがストレートに出ている本なので、受け止められないというか、かえって抵抗感を覚えるのではないかと、爺は危惧してしまふ。

この本は、爺のように、学ぶべきときに学ばなかった、機を逃してしまった大人の人たちこそ、読むべき本ではないだろうか。あるいは、どことなく「数学」に自信が持てない人(それも爺だ^^;)にこそ、オススメなのではないか。副題に「中学生からの全方位独学法」とあるとおり、著者は中学生を対象に書いているのだが、現役の中学生には、著者の熱き思いを受け止める余裕がないかも。それよりも、現役から離れ、もう一度、いちから学校で習った「数学」を復習して、ちゃんと理解しようとしている爺にとっては、学ぶべき道標ができた感じ。

「虚数の情緒」は、通り一遍の数学書とは、一線を画す。それなりの覚悟を持って、心して挑まなければならない……と思わせるほど、威圧感がある。よーするに、とっつきにくい本だ。でも、爺は知っている。とっつきにくいのは一切の妥協をしていないからだ。読者に「おもね、へつらう」気持ちなど、これっぽっちもない。だから、付き合っていくには、こちらも努力する必要がある。理解するほど、けっこういい友になれるかも……(爺は、これからボチボチと……^^;)

虚数の情緒
虚数の情緒
――中学生からの全方位独学法

著者/吉田 武
発行/東海大学出版会

※本書は、2000年2月20日が初版。爺が手にしている本は、2010年5月20日、第20刷だ。小飼弾氏の書評は、このタイミングでなされたものと思う(爺に、この本の存在を教えてくれた小飼氏に感謝!)。この手の本は、増刷といっても、何万部もいっきに増刷されるわけではない。タイミングを逸すると、入手困難が続く場合がある。

“■平成教育学院:マス北野の算数” への4件の返信

  1. お久しぶりです。
     分数の加減についてですが、書かれてある通り分数には「割合(比)」の概念を含んでいるます。そのため本来「割合の加減」には何の意味もないはずです。そのため上の金魚のような例が起こると考えています。
     逆に分数は乗除については理解しやすいと思います。単に分母と分子の数をそれぞれ掛けると答えが出ます。「単に」と書きましたが、実際は「割合」の概念を使って
    乗除の計算ができます。
     一方、小数は加減が理解しやすく、乗除が理解しやすいと考えています。これは小数が「1/10」という分数で揃えられた数だからだと思います。
     分数の加減には金魚のような「数」を使わず、長さなどの「量」を使うと理解しやすいかもしれません。たとえば以下のような計算ができます。
     1/2m+1/5m
    =50cm+20cm
    =70cm
    =7/10m
    これで「1/2+1/5=7/10」という計算の説明ができます。この計算の間に「1m=100cm」と加えると通分も理解できるはずです。
     取り留めもなく書いてしまいまして失礼しました。他の方から反応があれば幸いです。

  2. 金魚の話、上手く言い返せないです。
    しかし、グッピーの問題のところで
    99%=2/200
    98%=2/100
    と書かれている間違いは指摘できます。
    矢印を使う
    とか
    99%の場合2/200
    であるから
    98%に成る2/Xを考えると、xは100で有るから
    と言うような書き方にすべきであろう。
    数学を語る資格を疑います。
    (なお、金魚の上手い説明が出来ない憂さ晴らしに揚げ足をあからさまに取りました。
    豪快にすっ転んでください。ばーか。w)

  3. たかはるさま、間違いの指摘ありがとうございます。
    記事中の該当箇所を修正しました。

  4. 初めまして。
    金魚の話について語らせてもらいます。
    結論から言うと、
    場合によっては
    1/2+1/3=2/5
    が数学的には間違っているが、
    概念的には当たる場合がある。
    ということだと思います。
    例えば、
    5%の食塩水と10%の食塩水を足し合わせても、
    7.5%の食塩水になるとは限りません。
    それぞれぞの食塩水をどの割合で足し合わせるか?によって答えは変わるからです。
    金魚の話も同じで、
    赤い金魚が1匹いて黒い金魚が1匹いる水槽も、
    赤い金魚が2匹いて黒い金魚が2匹いる水槽も、
    (赤い金魚)/(金魚の総数)は1/2です。
    所詮、1/2は割合しか示しておらず、何匹ずつ存在しているかは表していません。
    ですから、
    5%の食塩水と10%の食塩水を足し合わせると、7.5%になる場合があれば、ならない場合もある。
    1/2と1/3の割合でいる金魚を足し合わせたときに、2/5の割合になるときもあれば、ならない場合もある。
    今回はたまたま1/2+1/3=2/5が成り立ったいうだけの話です。

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