■コマネチ大学数学科68講:時空図

 木曜深夜、フジテレビは「たけしのコマネチ大学数学科」の前に「もやしもん」というアニメを放映している(関東圏だけかも)。菌が肉眼で見えてしまうという特異能力を持つ青年が主人公で、これがおもしろい。で、「粘菌が迷路を解く」という話題をちらっと取り入れていた。実際に北海道大学で、その「粘菌」を見た、竹内薫センセの「コマネチ大学数学科」の第68講。今回は粘菌問題でも、年金問題でもなく、「時空図」ずら。

問題:A氏は外出先のB地点で、5時に迎えの車が来て帰る予定だった。ところが、用事が早く終わったので、B地点を4時5分に出発し、徒歩で家に向かい、途中で迎えの車に乗って帰った。この場合、B地点で5時まで車を待って帰るのと比べて何分早く家に着くか。A氏の歩く速さは時速4Km、車の速さは時速40kmとする。

 人と車の速度を設定し、青い矢印をドラッグして出発時刻を設定してね(※註:秒単位は、数値を丸めず、切り捨てている)。

 この問題のポイントは、家がB地点からどれくらい離れているか、わからないこと。それでも、何分早く着くかが判明する。それは、時空図を描くことができれば、明白になる。

 コマ大生チームは、サドルが2つある、二人乗り自転車を使って検証。時速40kmも出せないので、時速20kmで無法松が迎えに行く。それに合わせ、歩く速度を時速4kmの半分にするため、メトロロームに合わせて歩く。両足にヒモを結び、一歩一歩の歩幅も統一する。こうした検証の結果、実測で「17分6秒」となり、これを2倍して「34分12秒」という答えを出した。

 マス北野は、時速40kmの車が5時にB地点に到着するために40㎞離れた場所から4時に出発したと仮定。A氏が出発した4時5分の時点で、車は5分間走っている。A氏と車の距離は、
40km-(5/60)×40km=(110/3)
A氏と車は互いに(4km+40㎞=44km)のスピードで近づいているので、残りの距離を44kmで割る。
(110/3)×(1/44)×60=50分
A氏と車が出会うのは、
4時5分+50分で、4時55分。ここでA氏は車に乗り込み、家に帰るわけだが、もしも、B地点で待っていたら、車は5分後の5時にB地点に到着する。つまり、往復10分間の距離をおいて走り続けるので、家がどこにあっても、10分早く着く計算になる。答えは「10分」。

 東大生チームは、Y軸を距離、X軸を時間とした「時空図」を書いて正解し、コマネチ・フィールズ賞を獲得した。

 それにしても、50分も歩いて、10分しか早く着かないのなら、私は、まちがいなくB地点で迎えの車を待つ。山の中の一本道なら、いらしらず、迎えの車と途中で出会える可能性は少ないもの^^;

 コマ大生、ダンカンは、答えと自分たちの検証結果が大幅に違っていたことが腑に落ちない。そこで、あることに思いつく。車(時速40km)と徒歩(時速4km)を、それぞれ半分の速度の自転車(時速20km)と徒歩(時速2km)で検証したため、答えを2倍したが、逆に(1/2)にするべきだったんじゃないかと。そうならば「17分6秒」の半分で答えは「8分33秒」となる。

 しかし、私の作成したFlashムービーが正しければ、車(時速20km)、人(時速2km)に設定した場合でも、合流する時刻は「4時55分」になる。つまり、答えは変わらないのだ。

 実測に誤差が出たのは、雨の中の検証であったし、2人乗りの自転車をダンカンはズルして漕がなかったので、無法松ひとりでは、時速20kmに達していなかったのではないかと思われる^^;

 竹内薫センセの「美しき数学の時間」では、縦軸を(x)、横軸を(t)とする、時空図を描いて説明。人と車の移動を直線で表す。直線の傾きが速度だ。このふたつの直線の交点が、A氏と車が出会う地点(距離と時間)になるわけだ。答えは、ふたつの直線の連立方程式を解くことで得られる。
人:x=4*(t-(5/60)) ……式(1)
車:x-40=-40*t   ………式(2)
式(1)-式(2)
40=44*t-(20/60)
t=(55/60)
つまり、ふたつの直線が交差するのは「4時55分」

 また、「美しき数学の時間」では、相対性理論の時空図を紹介していたが、収録時間の関係で大幅にカットされてしまったのが残念;;

 以下、竹内センセの著書「アバウトアインシュタイン」から、私が想像する講義の内容。

 たとえば、観測者1の座標を(t,x)、速度(v)で遠ざかる観測者2の座標を(t’,x’)とすると、ニュートンの世界(ガリレオ座標変換)では、
t’= t
x’= x-vt
ふたりの観測者の時間(t)と(t’)は同じで、距離は、速度(v)×時間(t)となる。まあ、これがあたりまえなんだけど、アインシュタインの世界では、ちょっと違う。
真空中の光速度(c)=1とすると、
20071117_01

これが「ローレンツ変換」と呼ばれるもの。速度(v)が小さいときは、ガリレオ座標変換とあまり差が生じないが、速度(v)が大きいと、無視できないほどの差となる。

 ある殺人事件の証言者がふたりいる。証言者1は、図1の地点で事件を目撃したと言い、証言者2は、図2の地点で事件を目撃したと言う。
20071117_02

同一事件の目撃者の証言が、時間と場所が違うなんてことがあり得ない。そもそも、アリバイは、同一時間に別の場所にいることが証明されれば、犯行現場には存在できないことの不在証明だ。捜査の根本が揺らいでしまう。どちらかの証言者が嘘をついているのか? いやいや、アインシュタインの相対性理論の世界では、こんなこともあり得る。それは、証言者1が光速の80%(4/5)で移動していた場合だ。
20071117_03

うまく、図にできなかったが、ぎゅぎゅ、ぎゅーと変形させると、座標が重なる。納得できない人は、竹内センセの「アバウトアインシュタイン」を買って読もう^^; 時計が遅れるわけも、時空図を使って説明されているよ^^;

 で、相対性理論なんて、現実の世の中、私たちの生活には、何の影響も及ぼさないと思っている人がいないだろうか。「アバウトアインシュタイン」によると、地球の上空「2万メートル」(※註)に軌道にある、GPS衛星は、特殊相対性理論によって、1日に7マイクロ秒、遅れるらしい。また、一般相対理論によって、地球の時計は。GPSの時計に比べ、1日に45マイクロ秒遅れるとのこと。つまり、GPSの時計は、(45-7=)38マイクロ秒だけ、進むそうだ。もしも、この補正を行わないと、1日で誤差が10kmにも、なってしまうらしい。

※註(2005年6月 第1版第1刷):「2万キロメートル」の誤りかと思われる。 たとえば、ちょっと古いデータだけど、「GPSの現状と展望」というサイトの「GPS衛星の主要緒元」では、「軌道半径:26,561Km」とある。また、日本では、GPS衛星の誤差を解消するため、「赤道上空36,000km」の軌道上にある静止衛星「MTSAT」を利用した「MSAS」の整備を進めている(2007年9月)。

■今回作成したFlashのダウンロード(comaneci68.zip)
comaneci68.fla(Flash8)
comaneci68.swf
comaneci68.html

“■コマネチ大学数学科68講:時空図” への5件の返信

  1. コマネチ大学 #67

    コマネチ大学 #67
    たけしのコマネチ大学数学科#67  2007/11/15 深夜OA
     
     
    今回のテーマは、
    「時空図」
     
     
    【定番本】
    コマ大数学科
    特別集中講座
    ビートたけし
    ¥1,000
    【New】
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    ¥1,260…

  2. 今、NYのホテルから投稿しています!
    昨日は前夜祭(?)で一同、多いに盛り上がりました。たけしさんがホテルに戻った後、みんなでエンパイヤステートビルに繰り出そうということになり、私だけホテルに戻って寝ました(笑)←私だけ着いて早々だったため
    半日後には国際エミー賞の「決勝」です。はたして、どうなりますことか!
    応援、ヨロシク!

  3. 竹内薫センセ、NYからコメントありがとうです。
    「薫日記」のコマネチNY珍道中(1)も楽しく読ませていただきました。
    http://kaoru.txt-nifty.com/diary/2007/11/post_9266.html
    「たけしのコマネチ大学数学科」のエミー賞最終候補に選ばれたニュースは、スポーツ新聞各紙に取り上げられ、ネットでの検索率もアップしているようです。深夜番組なので、これまで、なかなか番組を見ることができなかった人たちへの認知度も高まったと思います。
    なにはともあれ、エミー賞の授賞式に立ち会えるだけでも、うらやましい。十分楽しんで来てください。
    さらに吉報が届きますよう「コマネチ大学」ファンのひとりとして、日本から念波を送り続けます^^;

  4. うう、残念……;;
    国際エミー賞「NON-SCRIPTED ENTERTAINMENT」部門は、イギリスBBCエンターテインメントが制作した「How Do You Solve A Problem Like Maria?」が獲得しました。
    で、ノミネートのタイトル画像が、タキシード姿のマス北野、吉田P、晴れ着姿の戸部ちゃんに変わっています。
    http://www.iemmys.tv/awards_nominees.aspx

  5. 受賞、逃しました。
    でも、情報戦と資金面で圧倒的に優位に立つイギリス軍が、9部門中6部門を二年連続で独占する中で、最後まで戦い抜いた感あり。
    ノミネートのタイトル画像は、現場の大勢の雰囲気を伝えていたように思います。
    帰国して、また、がんばります!

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