■コマ大数学科190講:数検からの挑戦

前回は「数検に挑戦」だったけれど、今回は「数検からの挑戦」だよ「たけしのコマ大数学科」

問題:1辺の長さが1の正六角形の形をした紙が水平に置かれています。この紙の上に先端にインクを付けた19本の針を落とします。これらの針は全て紙の上に落ち、各針とも少なくとも1カ所、インクの跡を付けるとします。このとき、インクの跡の少なくとも2カ所は、その距離が√3/3以下であることを証明しなさい。

一辺が1の正六角形の中にできるだけ離れた点を7個以上打つには、まず、頂点の6箇所に点を打つ(2点間の距離は、当然、1になる)。残りは、正六角形の中にランダムに点を打って、2点間の距離が、1/√3未満だったら、2点間を線で結ぶFlashを作成した。ランダムに点を打つと、「少なくとも2カ所」どころか、ほとんど、2点間の距離は、1/√3以下になる。問題の証明をするには、偶然に頼ってはいられないぞ^^;

コマ大数学研究会は、昔遊びの伝道師、「釘刺し」名人の松下秀夫さん(72歳)を訪ねる。「釘刺し」とは、地面に交互に五寸釘を投げて、地面に刺し、刺した場所を線で結び、陣取りをする遊び。爺も子供の頃、遊んだ記憶がある。相手の引いた線と交差したら負けというルール。だから、狙った場所に釘を刺すという技が求められるのら。

コマ大数学研究会の検証は、この「釘刺し」をヒントに、地面に正六角形の土俵を描き、1/√3以上の間隔を保ち、釘を刺していく(釘と釘の距離は、1/√3の長さのものさしで測る)。ただし、釘と釘の間隔が1カ所までは、1/√3未満になってもよい。

上のFlashは、釘を打つ(画面をクリックする)と、半径1/√3の円を描く。つまり、この領域内に新たな釘を打つと、2点間の間隔は1/√3未満になってしまうので、次の釘は、この領域外(1/√3の円の線上はぎりぎりセーフとして認める)に打たなければならない。

コマ大数学研究会の答え

C190_01

コマ大数学研究会の結論は、19箇所なんて、とんでもない、13本の釘を刺すのが限界というわけで、このような答えになったが、「一辺が1の正六角形の中に、お互いの距離が1/√3以上になるように、釘を何本刺せるでしょうか?」という問題ではなく、一辺が正六角形の中に19本の釘を刺したとき、あらゆる可能性を考えて「少なくとも釘を刺した2箇所の互いの距離が、1/√3以下になる」ことを証明することだ。

しかし、普通に考えれば、一辺が1の正六角形の中に互いが1/√3の距離の点を最大、何個置けるかという問題で、13個という答えが求まるなら、今回の問題についても、14個目の点を打った時点で、少なくともそのうちの2点間は、1/√3以下になるはず……と爺は思ってしまう。

竹内センセから「今回の問題は、何個の点を打てるか、ではなく、針が落ちる領域を考える」というヒントが出る。

マス北野&ポヌさんの答え

C190_02

マス北野は、正六角形を18個の三角形に分割。一辺が1/√3の正三角形と斜辺が1/√3の二等辺三角形だが、面積は同じ。ひとつひとつの三角形に1本ずつ針が落ちたとすると、針は18本。19本目の針は、必ず、いずれかの三角形に落ちるので、三角形の中に2本の針があることになる。

C190_04

いわゆる「鳩の巣原理」だ。鳩の巣(ゲージ)が18個あり、19羽の鳩が巣に収まっているとすれば、2羽の鳩が入っているゲージが、少なくとも1つはあることの証明になる。

木村美紀&山田茜さんの答え

C190_03

正六角形の頂点を結び、正三角形6個に分割してから、それぞれの正三角形の重心を結んで分割した。一辺が1/√3の正三角形と斜辺が1/√3の二等辺三角形を組み合わせ、面積が同じ三角形18個に分割した点では、マス北野と同じ。

竹内薫センセの「美しき数学の時間」

今回は、完全な正解者はなし。以下のように同じ形の「凧形」18個に分割するのが正解。

C190_05

正六角形を正三角形の6分割にしたあと、ひとつひとつの三角形を3分割すれば、3×6=18分割になる。ポイントは、正三角形の重心から各辺に垂線の足を下ろして、「凧形」にすることだ。

C190_06

「凧形」の長い方の対角線の長さは1/√3になり、短い方の対角線は1/2なので、「鳩の巣原理」により、1つの凧形の領域に2本の針があることになり、取り得る最大の距離は1/√3なので、少なくとも、2つのインクの跡は、1/√3以下になることの証明になる。

C190_07

マス北野&ポヌさんチーム、東大生チームの答えでは、一辺が1/√3の正三角形のほうはよいけれど、二等辺三角形のほうは、辺1を挟む2つの頂点にインクの跡がついた場合は、距離が1になってしまい、1/√3以下の証明にはなっていないんだよね。

C190_08

コマ大生の「釘刺し」方式でも、半径1/√3の円の交点を結んぶと、この「凧形」18個に分割できる。

今回のちょっといい話は「ボロノイ分割」。1908年、ゲオルギ・フェドセビッチ・ボロノイ(Voronoi)というロシアの数学者が考えた分割法らしい。

≪参考≫
ボロノイ分割
(作者:森川 浩 種類:フリーソフト)
http://www.vector.co.jp/soft/win95/edu/se366526.html

C190_09

マウスで点を打っていくと、領域をどんどん細かく、ボロノイ分割してくれる。まるで細胞膜と核のようにも見える。

※たけしのコマ大数学科の「過去問題」はこちらから。
コマ大数学科:2009年度全講義リスト
コマ大数学科:2008年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2007年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2006年度全講義リスト

コマ大数学科DVD-BOXガイド


“■コマ大数学科190講:数検からの挑戦” への3件の返信

  1. テレビの模範解答を見てもよく分からなかったので、ネットを調べていて、このサイトにたどり着きました。
    この問題を理解されているようなので、もしよろしければ、私の疑問に答えていただけないでしょうか。
    疑問は以下のとおりです。
    ①18個の点を1/√3の距離で置くことが可能なのでしょうか。
    ②コマ大チームの答えの13個の点が、まさに凧型の長いほうの対角線の距離を離して置いたものではないのでしょうか。
    ③コマ大チームの言うとおり、13個が限界なのではないのでしょうか。
    よろしくお願いいたします。

  2. Lさま、コメントありがとうございます。
    ①18個の点を1/√3の距離で置くことが可能なのでしょうか。
    無理だと思います。ただし、その証明を数学落ちこぼれの爺に求めてはなりません^^;
    ②コマ大チームの答えの13個の点が、まさに凧型の長いほうの対角線の距離を離して置いたものではないのでしょうか。
    その通りです。ただし、点はランダムなので、ひとつの凧形のどの位置にもある可能性があります。ひとつの凧形の点と、その隣の凧形にある点を取り上げたとき、そ2点間の距離は、必ずしも1/√3未満ではありません。
    ③コマ大チームの言うとおり、13個が限界なのではないのでしょうか。
    直感的には、爺もそう思います。ただし、あらゆる可能性を考えると(爺は正六角形の中心からもっとも離れているのが、各頂点だから、頂点を中心に半径1/√3の円を描くことを考えましたが、仮定にすぎません)、別の方法があるかもしれません。13個が限界であることをきちんと証明すれば、14個以上の点は、必ず1/√3以下になることを証明できます。爺にはできませんけれど><;
    「鳩の巣原理」は、このような、証明がやっかいな問題のとき、直感的にも、数学的にも、有無を言わせず、すっきり証明できる点が便利なんですよね。
    たとえば、もしも、正六角形を同じ形に13分割し、もっとも長い対角線が1/√3以下であるような図形を描くことができれば、立派な証明になります。
    今回の問題は、はじめに正六角形を18分割した図形ありきで、それを元に問題を作成したから、19個の点ということなのでしょう。
    どうにも、すっきりしませんが、直感的には誰しも「そーなるだろう」と思うことでも、数学的に証明できないことってありますよね。
    爺は、そーとーアバウトで、いい加減な性格なので、数学の証明問題は大嫌いで、証明しようという気にもなりませんが(それ以前に数学的素養がない;;)、でも、Lさんは、がんばって、14個の点を打つと、必ず、そのうちの2点間は1/√3未満になることを証明してください。

  3. 初めまして。
    何となくプラプラしていてこのページに辿り着いたのですが、以下のような回答では駄目でしょうか。
    正六角形を正三角形x6に分割し、更にその正三角形の全ての辺の中点にも点を取ります。
    すると元々の正六角形の頂点を含め全部で点が19個になります。
    これらの点は全ての点からどの別の点までも距離は0.5で、かつこれらの点で結ばれる領域で元々の正六角形の紙面を完全に覆い尽くしている状態で、これ以上疎らに点を配置することはできません。
    この状態からどの点をどの方向に動かしても必ずいずれかの点との距離が0.5よりも小さくなるので、元々の紙面上に19個の点を配置しようとすると互いの距離の最小値は0.5であり、0.5<√3/3です。
    やはり、どこかうさんくさい感じがしますね。厳密な証明とは言い難いですかね・・・

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