■コマ大数学科184講:競売

問題:ある駅前の土地が競売によって売り出されることになった。競売の方法は以下の通り。

買い手は自分の買い値を紙に記入して、それを秘密にしたまま、入札箱に投入するものとする。買い手が入札を終えた後、売り手は入札箱を開けて一番高い値をつけた買い手に、その人がつけた買い値でこの土地を売ることにする。一番高い買い値をつけた買い手が複数いる場合は、その中から公平なくじ引きで選ばれた1人に売ることにする。

A氏は、この土地を用いた事業を行うことで5億円の利益が得られるとする。つまり、競売に参加してX億円で土地を買うことができたとすると、A氏の利益は5-X億円になる。土地を変えなかった場合は、事業の利益も土地購入代も発生しないので、A氏の利益は0円と考える。

この競売に、A氏の他にもう一人の買い手(B氏)が参加しているとする。買い値は、1億円単位でつけなければいけないものとする。B氏のつける買い値をY億円とし、Yは1から10までの整数を等しい確率でとるものとする。

利益の期待値を最大にするためには、A氏はいくらの買い値をつければ良いか。

※2010年東京大学(後期)総合科目II問題

この土地が生みだす利益は5億円なので、5億円で落札しても利益は「0円」。利益を生む入札額は「1~4億円」となるが、相手より額が大きくなければ落札できない。さて、もっとも利益を期待できる入札額は……。

コマ大生の検証

コマ大数学研究会は、ちょっと強面の競売コンサルタントの藤山勇司さんに「競売」について教えてもらう。競売に必要なものは、(1)住民票、(2)売却基準価格の2割の頭金、この2つが揃っていれば、誰でも参加できるという。結局、コマ大生は藤山勇司さんに今回の問題を見せ、解答してもらった。

コマ大生(藤山勇司さん)の答え
入札額「3億円」(期待値は5千万円)

マス北野&ポヌさんの解法

マス北野は、総当たり戦の星取表を描いて考えた。

図(1)

入札額が5億のときは、利益が0、入札額が1億のときは落札できないので、入札額は、2~4億の間で考えればよい(※爺註:実際は、1億でもくじ引きによって落札できる可能性はある)。

で、星取表の「勝率×そのとき得られる利益」を考えると、3億のときが1番高い。というわけで、答えは「3億」。

マス北野の説明を聞いていたダンカンが「藤山勇司さんも、マス北野と同じような表を描いていた」と発言。

・藤山勇司さんの表

図(2)

藤山さんの表では、Bさんの入札額をちゃんと1~10億としてあった。ただし、Aさんが利益を生むような入札額は1~4億までを考えればよい。表内の数字は、そのとき得られる利益で、入札額が同じ場合は、くじ引きなので、(1/2)となる。灰色の部分は、落札で負けるので利益は、0円だ。入札額ごとに落札した場合の利益をすべて足すと、3億で入札したときが一番高い。また、期待値は、すべての場合の平均値なので、10で割ると、入札額3億円の場合の期待値は、0.5億円になる。さすが「競売コンサルタント」の藤山さん、顔は怖いけれど、爺のような「競売素人」にも、やさしくわかる説明だ^^;

マス北野は、Bさんの入札額が「1~10」億というのを考えに入れなかったみたい><;

木村美紀&加納舞さんの解法

今回は、木村美紀と「東大生になりたい!SP」で登場した、加納舞さん(東大工学部3年)の東大生チーム。

図(3)

「x=(11/4)」を小数で表すと(2.75)、つまり、入札額は2億7500万円になるが、今回の問題では、1億円単位で入札することになっているので、答えは「3億円」。

ん? 「平方完成」は良いけれど、途中の計算が間違っていないだろうか。検算すると、「x=(11/4)」のとき、期待値が「2515万6250円」になってしまう><;

・爺の計算

図(4)

・微分を使って、Maximaで検算。

図(5)

図(6)

竹内薫センセの「美しき数学の時間」

期待値は、利益×確率で表すことができる。5億円の見込み収益に対して、5億円を投資したのでは、利益は0円なので、Aさんの入札額は、1~4億円の範囲で考えればよい。1億円単位の整数なので、場合分けして期待値(見込み収益)を求めることができる。

図(7)

Aさんの入札額が整数とは限らない場合は、東大生チームが行った、2次方程式を「平方完成」する方法と、微分して放物線の傾きが「0」になる点を求めればよい。

図(8)

今回の問題では、「土地を用いた事業」の利益(見込み収益)を5億円としたが、元の問題では、利益をa億円(aは、2から10までの整数)とした場合、もっとも利益が見込まれる入札額を「aを用いて表せ」となっている。

2010年東京大学(後期)総合科目II(問題 , 解答

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※たけしのコマ大数学科の「過去問題」はこちらから。
コマ大数学科:2009年度全講義リスト
コマ大数学科:2008年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2007年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2006年度全講義リスト

コマ大数学科DVD-BOXガイド


“■コマ大数学科184講:競売” への2件の返信

  1. さすがガスコンさん♪
    東大生の計算は間違えていました。
    11/4 があっているから、OKと
    したのかな?
     #本来はあの計算だと・・・・。
    藤山さんが(コマ大代打の)が妥当だったと思うけど ヾ(@⌒ー⌒@)ノ
    えっと、セリの方式が後に出てきましたね。
    あの中でゲーム理論の話が少し。
    1:セリ上げ、公開式(普通のオークション)
    2:セリ下げ、公開式(オランダ式)
    3:入札非公開 (普通の入札)
    4:入札非公開 (金額は第2位の金額を支払う) ビックリー式
    1だと、心理戦とかではなく「見栄」でも上がるんですね。
    2は、セリ下げるかというと、もともと高めに設定しておいて、どのくらいだったら買いますか?という問いかけのセリになります。
     #原価100円のものを、1000円で出す。
     #100円以上(そこには儲けがいるから+α)200円くらいかな?で売れなければ、止めるわけです。売らない用にするんですね。
    これを何度かやって、商品価格を決める
    と、いう方法で値段を決めることもあります。
    3は談合しやすいんですよ。
    どこも一緒です。「勝者の呪い」は
    後悔だけではなくて、次からの談合を生む呪い
    かも知れません。
    4。これが一番いいといわれている方法。
    なぜかあまり使われません。
    適正価格になりやすいのはこれなんですよ。
    だけどあまり使われない。
    推測ですが、不正しにくい て言うのも一因かも? 業者間だけじゃなく、官製談合もやりにくい。
    数学どおりには物事行きませんね><
    利害が絡むとまた別です><
    (=^. .^=) m(_ _)m (=^. .^=)

  2. お久しぶりです。
     上の1億円単位でない場合の計算で、式の上では11/4億円で最大になるようですが、実際に最大なのか調べました。
     極端な例ですが「2億1円」の場合を考えます。Bが2億円までの入札額ならAが落札し利益は「3億-1円」になります。Bが3億円以上で落札した場合はAには影響がないため、
    期待値=0.2×(3億-1)=約0.6億
    となり11/4億円の時より高い期待値を取ることになる…ようです。
     ただ、この例はBが1億円単位で入札するため不公平になります。A,Bとも1円単位まで考えるとなると計算はもっと複雑になりそうです。

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