■コマ大数学科170講:影Part2

光あるところに影がある。まこと栄光の影に数多くの忍者の姿があった。だが、人よ名を問うことなかれ、闇に生まれ、闇に消えるのが忍者の定め。「サスケ~♪」あ、名を言っちゃった「たけしのコマ大数学科」

170講(1)

問題:底面が半径1mの円で高さが1mの円柱と、底面の円の中心から2m離れたところに高さ2mの街灯がある。この街灯が地面に作る影の面積を求めなさい。

今回のテーマは「影」ということで、コマ大生が訪れたのは、1952年創立、日本最初の影絵専門劇団「かかし座」。世界的な評価も高く、コブクロのプロモーションビデオでも有名だ。そんな「かかし座」に体験入団。劇団員から、指や手だけでなく全身を使った「影絵」の手ほどきを受け、コマ大生ならではの「影絵劇場」を披露した。吉田Pによる「ハゲ絵」のおまけ付き^^;

で、検証のほうは、直径30cmの円柱と照明機材で問題を再現。方眼紙に影を落とし、鉛筆で影の輪郭をなぞって、図形を描く。面積は、いつものように、方眼紙のマス目を数えて求める作戦だ。

170講(2)

「Shade」で再現すると、こんな感じの影になる。

コマ大数学研究会の解法

コマ大生の検証では、方眼紙の0.5cmマス目が2708個、半径15cmの円柱を使用したので、センチ単位の面積比(15×15=225)で割り、2708÷225≒12平方cm。これをさらに(100×100=10000倍)してから、10000で割ってメートル単位にするという、コマ大生らしい計算を行って、答えは「12平方m」

マス北野&ポヌさんの解法

170講(3)

マス北野は、上のような正面図と平面図を描いて、面積の計算はポヌさんにまかせてしまう。大きな正三角形から、A,B,Cの部分を引けば、求める影の面積になるが、かなり計算がめんどうくさい。

マス北野&ポヌさんの答えは「2(√10-1)+(13/6)π」となった。マス北野に言わせると、「こんな答えになるはずはない。どこかで計算間違いをしている」とのことだが、ポヌさんは、これを計算すると、コマ大生の答えに近くなるという。小数で表すと「11.13133940311464」だ。

ガスコン爺の≪番外編≫

マス北野&ポヌさんの解法を、爺は「Maxima」で計算してみた。

170講(4)

マス北野&ポヌさんの解法は、考え方としては正しいものの、計算がややこしくなってしまった。爺は、もっと簡単に計算できる方法を思いついた^^;

170講(5)

「C」の部分は、辺の比が2:1:√3の直角三角形であることは明白(円の接線は円の中心に対して直角)、面積は三角形2つで「√3」だ。「B」の欠けた円の面積は「(2/3)π」。この「B+C」と、「B+C」を含めた影の部分は相似。X軸で2倍、Y軸で2倍になっているので、面積は4倍、そこから「B+C」の面積を引いてやればよい。つまり「B+C」×3で求めることができる。

東大生、衛藤樹さん&伊藤理恵さんの解法

正面図、平面図を描くのは一緒だが、東大生は、影の部分の円の中心を(0,0)として、円の接線の座標を計算で求めた。

170講(6)

170講(7)

街灯が作り出す影の問題は、相似と比がポイント。応用問題も数多いようで、今回の問題は「円の接線」がこれに加わる。さすがに、この手の問題を解き慣れているという感じの東大生チーム。答えは「2π+3√3」で、「平方m」の単位を書き忘れた。マス北野は「単位がなければ失格だね」とツッコミを入れたが、マス北野&ポヌさんチームも単位は書いてなかった^^; というわけで、コマ大フィールズ賞は東大生チームが獲得。

竹内薫センセの「美しき数学の時間」

170講(8)

ここまで来れば、もう説明は不要だと思うけれど、青い部分(S2)は、2:1:√3の直角三角形で、2つで面積は「√3」、オレンジの部分(S3)は、一辺が「2√3」の正三角形に内接する半径1の円の面積を取り除いた部分の「2/3」だ。

同じ面積を求める問題なのに、それぞれの発想と方法(パズルを組み立てるピース)が、びみょ~に異なっていて、爺には、おもしろく感じた。

竹内薫センセのちょっといい話は「影絵」。「東海道中膝栗毛」で有名な「十返舎一九」(1765~1831年)は、江戸時代後期の大衆作家だが「和蘭影絵 於都里綺」という本を著わし、後世に残している。その本から、いくつかの「影絵」の作り方の紹介をした。

≪参考≫
和欄影絵 於都里綺(おらんだかげえ おつりき)

爺のどーでもいい話

今回の問題を「Shade」で再現しようとしたときの話。爺は深く考えず反射的に「街灯」は「点光源」で作ればいいと考えた。「点光源」は、言ってみれば数学的概念で、光を発しているんだけれど、その姿は見えない(実体はない)。とゆーか、具体的な大きさを持っていれば、点光源とは言えない。

「Shade」で点光源を配置し、レンダリングしても画面には表示されない。そこで、現実の電球と同じように点光源をガラスの球でぐるりと囲むわけだが、空中に浮いているというのもなんなので、それを支える柱と地面を作る。まあ、現実の「街灯」に近くなるのだが、困った問題が生じる。

「街灯」自体(正確には支柱)の影が地面に落ちてしまうのだ。支柱のてっぺんから点光源までの距離を離したり、支柱の半径を小さくすれば、地面に落ちる影は小さくできるが、なくすことはできない。また、支柱と点光源の距離を大きくすることは、ガラス球(球とは限らないが)が大きくなり、その屈折や乱反射で、そもそも問題の前提である「点光源」という条件を満たさなくなってしまう><;

だから、今回の問題「この街灯が地面に作る影の面積を求めなさい」は、「(街灯の光によって)この円柱が地面に落とす影の面積を求めなさい」としてくれれば、爺の「困った」はなくなったかもしれない^^;

爺は今「数学は言葉」(新井紀子/著)を、ちょうど半分くらいまで読んだところ。この本の中で新井センセは「なぜ数学教科書の日本語は難解か」の理由として、「数文」を「和訳」する際、「記述しなければならないありふれた現実の複雑さと、自然な文章で表現できる範囲、そのギャップをどうしようもない形で出現するのが高校の数学教科書というわけです」と書いている。簡単なわかりやすい言葉で記述できれば、それにこしたことはない。数学は明確な定義が必要だけれど、日本語の定義、たとえば「影」をどのように定義するかは、いちいち、書いていられないわけ。

ところで、「影」の定義だが、今回の問題で「円柱の底の地面に影はできないのか?」という素朴な疑問を抱いた人がいるかもしれない。爺は思わず「足の裏に影はあるか?ないか?」(入不二基義/著)という本をアマゾンで注文してしまったが、まだ届いていないので読んでない。これは「誰もいない森で木が倒れた。はたして音はするか?」とか(違うか!^^;)、いずれにしても、数学問題ではなく、人間の認識論や哲学問題に発展してしまう^^;

でも、爺が考えるに「光のない真っ暗な部屋の中では、影は存在しない」と思う。「光あるところに影がある」のだ^^; 神が「光あれ!」と叫んだのは、宇宙の開闢から38万年ほどたった頃。これにより、宇宙は晴れ上がり、光はまっすぐ進めるようになったのら(またまた、見てきたような法螺を吹く爺だ)。真っ暗な部屋で電灯を点けたとき、初めて影ができるわけね。つまり、円柱が密着している地面との間は、光がない状態だから、光によって生まれる影(という概念)もないってことで、どーでしょう。

※コマネチ大学数学科の「過去問題」はこちらから。
コマ大数学科:2008年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2007年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2006年度全講義リスト


“■コマ大数学科170講:影Part2” への2件の返信

  1. 注,v(AB)はベクトルABとする
    問題の状況を上から見るものとする.
    街灯のある点をOとする.またO,二つの接線分,円柱の膨らみ4/3πradによって囲まれた円柱の周によって囲まれた図形をS(見た目は気球に似てる)とする.またS内における円の周上はこの解答において考えない.
    さてSの周上の円周部分の点をAとする.また,直線OAと影の外側の周との交点をaとする.この時aとOの距離は,AとOの二倍である.これは横から見た時光源,街灯の足元,aがつくる三角形と光源,街灯の中央部分(高さ1mのところ),Aがつくる三角形が同一平面上にある相似な二つの三角形であることからわかる.
    再び視点を上に戻す.さてSの周上の円周部分の任意の点についてv(Oa)=2v(OA)であるから,SとS+影の図形はOを相似の中心とし,相似比1:2の相似な図形である.よって影の部分の面積は3Sである.
    ちょっと言い方がわかりにくいかもしれませんがどうでしょう。

  2. 私も相似で解きました。
    ある線に対して任意の点からの距離が常に一定倍になるように引かれた線は相似になります。
    故に、上面図の相似比は1:2、面積比は1:4になるので、影の部分の面積は元の面積の3倍になります。

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