■数当てゲーム(泡坂妻夫/篇)

 ある数を思い浮かべてもらい、数字が書かれた何枚かのカードを提示して、数を当てる数理マジックがある。当ブログの過去記事「ネプ理科:数当てゲーム」でも紹介したけれど、二進数を使った方法が有名だ。しかし、推理作家であり、奇術師でもある泡坂妻夫氏の「数当てカード」は、ちょっと違うようだ。

 じつは、爺がこのマジックを知ったのは、小島寛之センセの「数学幻視行-誰もみたことのないダイスの7の目」(1994年)で紹介されていたから。小島センセは、マジックのネタばらしをするような人ではないので、爺なりに考えてみたのが上のFlash。あなたも、この仕組みを考えてほしい。

 カードを1枚ずつ見せられると、わかりずらいが、数字の書かれたカードは全部で5種類。

数当てカード

 爺も小島センセに習い、マジックを考えた泡坂妻夫氏に敬意を表し、これ以上の説明は控えよう。

 「数学幻視行」(1994年)は、小島センセの「数学迷宮」に次ぐ、一般書2作目。

 本書は、第1部「数学アレルギーに効く12杯のカクテル」(数学セミナー「数学カクテルラウンジ」の連載をまとめたもの)、第2部は、完全書き下ろしの「思索家のための『科学の霊域』」という構成。瀟洒なカクテルラウンジで知的な数学談義(爺は、居酒屋で焼酎だけど><;)。1杯目の「トリック・ハイ」からメロメロだ。

 注目すべきは、「数学は"私"の心に棲息する」、つまり「数学はあなたの中にある」という「文系のための数学教室」(2004年)で展開された、小島センセの基本スタンスが、すでに本書でも言及されていること。

 「私」は「世界」を外側から眺めることはできない。「世界」=「私」=「私の生」とするならば、「数学」もまた「私」の中にある。「数学が何の役に立つのか」という問いは、「あなたは何の役にたつのか、生きていて何の価値があるのか」と問うことと同値、それは決して問われてはいけない問いであり、人間に対する尊厳への挑戦だと小島センセは言う。

 フーテンの寅さん流に言うならば「それを言っちゃあ、おしめえよ!」ということになるのだろうか^^;

数学幻視行
数学幻視行
―誰も見たことのないダイスの7の目

小島寛之/著

新評論
(1994/6)
※現在、新品での入手は困難

文系のための数学教室
文系のための数学教室

小島寛之/著

講談社現代新書
(2004/11)

※参照
「ガスコン研究所」の過去記事