■コマ大数学科145講:可視領域

ふつう可視領域というと光の波長を思い浮かべる。見える範囲ということなら視野角でいいんでないの「たけしのコマ大数学科」

問題:広い場所に高さ5.5mの棒が垂直に立っています。遠くからこの棒に向かって秒速1mでまっすぐ進むとき、上から5mの赤い部分を見込む角度が30°以上であるように見えるのは何秒間でしょうか?
※ただし、目の高さは地面の位置(0m)とする。

ヘンな虫(?)の下にある丸いボタンをドラッグして動かすと、虫も動く。棒から遠く離れていると棒の赤い部分を見たときの角度は30°以下になり、近づくと角度は大きくなる。また、棒にかなり接近した場合も、30°以下になる。問題は、視野角が30°以上になる区間の距離を求めることができれば、速度は1m/Sなので、何秒間かわかる。

コマ大数学研究会は、お台場・潮風公園に設置された、高さ18mの実物大「ガンダム」を使って検証? と思いきや、見物客がいっぱいいるので、それは無理。そこで、高さ5mの垂れ幕に「マスダム」の絵を描き、無法松のヘルメットに小型カメラを取り付け、台車に乗せて「ガンタンク」ならぬ、「ムホタンク」を動かし検証。

コマ大生の答えは「13.5秒」

衛藤樹さん、伊藤理恵さんの東大生チームは、とにかくゴリゴリ計算戦略(?)だ。各辺の長さは、ピタゴラスの定理(c^2=a^2+b^2)で求めることができる。

東大生の答え(1)

各辺の長さがわかれば、余弦定理を使い、角度が30°のときの方程式を立てる。

東大生の答え(2)

計算が苦手な爺は、お手上げだが、角度がちょうど30°になるのは、2点ある。二次方程式の解の差が「x」になると考えた。

東大生の答え(3)

というわけで、東大生の答えは「5√3秒間」

この答えを聞いた、マス北野は「こりゃ、間違いだね、√3という時間はないから」と言い放つ。つまり、正確に時間を測ることができない答えになるはずがないという意味。そのマス北野は、アナログ戦略(?)。問題用紙をハサミで切り始めたが(過去にもマス北野は問題用紙を切り抜く荒業を使っていたので)、問題用紙の図は、わざと正確には描いてないようだ。しかし、マス北野の狙いは、正確に30°になる点(距離)を作図することにあった。そうして出来上がったの下図。

マス北野の答え

(※色塗りは爺)

マス北野の答えは、アナログの力、測って「8秒」

正解は「8秒」ということで、マス北野は「やっぱりアナログには勝てないなぁ」と勝利の舞を踊った。

中村亨センセの「美しき数学の時間」

対戦を見守っていた中村センセは、マス北野が問題用紙を切って、30°の点を正確に出し、作図している様子を見て、「マス北野はわかっている」と言っていた。

今回は、ふたつの解法を紹介。ひとつは、マス北野がやったように作図から直感的に答えを導くものだ。

解法1 円周角の定理

美しき数学の時間(1)

赤い棒の上端を「A」、下端を「B」、見込む角度が30°になる点を「C」を通る外接円を描き、中心を「O」とする。

美しき数学の時間(2)

ABに対する円周角(C)は、30°なので、ABから円の中心(O)に線を引くと、中心角は円周角の2倍、60°になる(円周角の定理)。

∠AOB=2∠ACB=2×30°=60°
AO=BOなので、△AOBは二等辺三角形。よって、2つの底角は等しい(タレスの定理)。
∠OAB=∠OBA ※ともに60°
つまり、△AOBは、正三角形。

美しき数学の時間(3)

円Oが地面と交わるもう一点を「D」とする。
CDの間、見込む角は30°以上になる。つまり、CDの長さを求めればよい(※D地点からABを見上げると30°になる)。
円の中心Oから地面に下ろした垂線の足(真下の点)を「E」とする。
OE=(5/2)+0.5=2.5+0.5=3
OCは、円Oの半径なので、OC=5
△OCEは、辺比が「3:4:5」の直角三角形。
二等辺三角形の底辺に頂点から下ろした垂線の足は底辺を二等分する(タレスの定理)。
よって、DE=CE=4 ∴CD=8

解法2 tanの加法定理

美しき数学の時間(4)

東大生は、どこかで計算間違いをして、「x=(5√3±8)/2」が、「x=(8±5√3)/2」になってしまったようだ。マス北野の言う通り、「5√3秒」がおかしな答えだと気がつけば、計算間違いを発見できたかも……。

「タレス」って、ダレッス? (c)中村センセ

今回のちょっといい話は、「タレスの定理」に名を残す、ギリシャ七賢人のひとり、ミレトスのタレス(BC624~BC546年頃)のエピソードを紹介。ギリシャ最古の哲学者とも言われ、タレス自身が著わした書物は残っていない。代わりにいろんな人が彼を語っている逸話が残されているわけね。

「哲学は何の役にもたたぬ」と非難されたタレスは、天文学の知識から、次のオリーブの収穫は豊作になるだろうと考え、ミレトス沖の島のオリーブの圧搾機械を借り占めた。案の定、オリーブは豊作で、しかし、圧搾機械がないため、皆がタレスに圧搾機械を借りに来て、大儲けをしたという。

期を逃さなかった前エピソードと比べると、まったく逆なのが、母親がタレスに妻を娶るように勧めたところ「今はその時ではない」と断り、盛りを過ぎてからは「もうその時ではない」と断ったそうだ^^;

プラトンが残した逸話では、タレスが夜空を見上げ天文学の観察をしていると、溝に落ちてしまったそうだ。傍らにいた女の人に助けられ、「自分の足元もわからない人が、なぜ遠い星のことがわかるの」と笑われタレス。

※Pencil Missaileは、[SPACE]キーでも発射できるよ^^;

※コマネチ大学数学科の「過去問題」はこちらから。
コマ大数学科:2008年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2007年度全講義リスト
コマネチ大学数学科:2006年度全講義リスト


“■コマ大数学科145講:可視領域” への2件の返信

  1. はじめまして。「コマ大」で検索して辿り着きました。グラフィック表示が素晴らしいですね。脱帽です。
    さて、今回の東大生チームの敗因を検討したところ、次の二点に集約されそうです。
    1.xを求めた時、±を忘れたこと。
    2.8<5√3に気付かなかったこと。
    この教訓を他山の石としたいと思います。
    文末ながら、今後のご発展をお祈りいたします。

  2. アキレ・サンタさん、コメントありがとうございます。
    これからも、爺なりに「いいちこ」な感じでがんばりマス。

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