■書籍:人類の住む宇宙

 宇宙が膨張していることの説明のため、ある程度膨らませた風船の表面にマジックで3つの点を描き、さらに風船を膨らませる。「ほら、どの点から見ても、互いに遠ざかっているでしょ…」というのを、テレビなどで見たことがある人は多いと思う。

「放送大学」の「宇宙の進化」という講義を視聴していたら、もっとスマートな方法で説明していた。上の爺が作成した「Flash」は、それをマネたもの。画面内でマウスポインタを動かしてみてね。

 紙にランダムに点を描き、それを星に見立てる(実際の星を映したネガフィルムと思ってほしい)。これをコピー機でほんのちょっと拡大する(102~105%くらい)。で、ふたつの紙を重ねて、透かしてみると……上の「Flash」のようになる。で、マウスを動かし、中心をどこに置いても、遠ざかって見える。つまり、宇宙が膨脹していると、どこから見ても、星が遠ざかって見える。

 アインシュタインは、一般相対性理論を宇宙に適用して、運動方程式とエネルギー保存則をひとつにした式を発表した(1917年)。でも、当時、アインシュタインは、宇宙の大きさは時間変化しないと、思っていたもんだから、宇宙が膨張したり、重力によって宇宙が収縮する力を打ち消すために、根拠が不明な宇宙項(宇宙斥力)を付け加えてしまった。

 ハッブルは、ウィルソン天文台で銀河を観測し、私たちの住む銀河系にもっとも近い、アンドロメダ銀河を除き、遠くにある銀河は例外なく、遠ざかっているという観測結果を発表した(1929年)。アインシュタインは「あちゃ~! 人生最大の失敗」と嘆いたことだろう。じつは、のちになり、宇宙項は「ダークマター」(宇宙に存在する、暗黒物質の質量)によって、再び、注目される。宇宙項の大きさ如何で、宇宙の未来は変わってしまうのら。

 ハッブルの式は、いたって簡単「V=HR」。Vは、銀河が遠ざかる(膨張)の速度、Hは、ハッブル定数、Rは、私たちの住む銀河系からの距離だ。

フリードマン・モデル

 ハッブル定数は、時代によって、どんどん変わってきたけれど、現在では「71km/sec/Mpc(メガ・パーセク)」くらいだろうと言われている。

 んで、今回、オススメの本は、「放送大学」の講義の中で、たびたび、この本から、表や図版が引用されていたので、興味を抱き、取り寄せてみた次第。

 「人類の住む宇宙」は「シリーズ現代の天文学」という全17巻の第1回配本。アマゾンで検索してみると、現時点ですでに13巻くらいまで刊行されているようだ。「日本天文学会が総力を結集した100周年記念出版」と謳っているように、かなり、装丁もしっかりとしていて(そこかい^^;)、内容も、表や図版をふんだんに使い、すばらしい。私が手にした版の帯には「いきいきとした天文学の現在にふれる」とある。

 確かに、ここ近年、観測機器の精度が上がったり、新しい観測方法によって、天文学は著しい進歩を遂げているよね。新しい「発見」のニュースに接するたびに、けっこう爺は「わくわく」したり、「すげぇ~」と感心したりする。

 で、このシリーズ、第2巻以降は、かなり難しい内容(爺にとって)にまで踏み込んでるみたいだけど、第1巻は、その導入編的な位置づけで、天文学の基礎的な、それでいて、おいしいところをつまみ食い的な構成になっていると感じた。

 それにしても、天文学、天文物理学は、宇宙誕生のビックバン時の宇宙温度10^32Kから、宇宙背景放射の2.74Kまで、量子のゆらぎの大きさから、宇宙の泡構造の大きさまで、おそろしくレンジの広い学問だにゃあ……。

人類の住む宇宙
人類の住む宇宙
(シリーズ現代の天文学 第1巻)

日本評論社(2007/01刊)
編纂/
岡村定矩 東京大学大学院理学系研究科
池内 了 総合研究大学院大学
海部宣男 元国立天文台
佐藤勝彦 東京大学大学院理学系研究科
永原裕子 東京大学大学院理学系研究科