■書籍:天才の時間

天才の時間
天才の時間
竹内薫/著
NTT出版
1600円+税

 竹内薫センセは「天才たちには、ある共通点があるのではないか?」と考えた。それが「天才の時間」だ。天才たちの生涯は、天才たらしめる偉業を達成する前に、必ず、世間や仕事など、そういった雑事から開放された時間が存在するという。「休暇」、または「熱中する時間」、あるいは「熟成期間」と呼んでもいいが、本書では、それを「天才の時間」と呼ぶ。

 そして、本書のカバーに仕掛けられたギミックとは……?(ギミックとは、手品などの「仕掛け」という意味なので、これでは、「仕掛けられた仕掛け」となり、「馬から落馬する」と同じ、重複表現になっちゃうかも^^;)

 竹内センセの本は、どれも、おもしろい切り口で楽しめるのだが、「非公認 Google入社問題」や「ヘンな数式美術館」は、食欲をそそる前菜、シェフが腕によりをかけたデザートといった趣で、もちろん、おいしくいただき、大満足なのだが、この「天才の時間」は、竹内シェフのメイン料理をがっつりいただいた感がある。

 ニュートン、アインシュタイン、ホーキング、ラマヌジャンといった数学者をはじめ、生物学者のダーウィン、物理学者のペレルマン、だまし絵の版画家エッシャー、哲学者のカント、ヴィトゲンシュタイン、心理学者のユング……。日本人では、雨ニモ負ケズの宮沢賢治、小説家の鈴木光司、マス北野こと世界の北野武にいたるまで、さまざまな分野の「天才の時間」を紹介してくれている。

 天才たちの頭の中がどうなっているのか、何を考えていたのか、凡人の爺には、知る由もないが、どれも興味深いエピソードに溢れている。それぞれの天才たちを理解するための、竹内センセおすすめの文献を数多く挙げてくれているのも、ありがたい。

 竹内センセは「天才とは天賦の才ではなく、天が与えた時間をうまく使いこなす才能のことだ」と言う。傍から見ると何もしていない時期に、世事から離れ、天才たちは没頭し、あるいは、それが熟成の期間になる。それは、外的な要因もあるけれど、爺が思うに、本人の意思でもなく、他の判断基準は消え失せ、言葉は悪いが偏執的なもの。やむにやまれない、そうせざるを得ない、たったひとつの選択肢だったのではなかろうか。

 ところで、冒頭の「天才の時間」の表紙カバーに仕掛けられたギミックだが、竹内薫センセのブログ「薫日記」を読んでいる人なら、もうご存知のはず。この謎を解くと、竹内センセが自前で用意した図書券が贈られるというイベントがあった。すでに先着10名の解答者が決定し、竹内センセから「正解」も発表されているので、ネタばらしをしても、怒られないのではないかと思う。

天才の時間

 これは、表紙カバーを300dpiの解像度でスキャニングした画像の一部を、黄色だと見えづらいので、色変換したもの。びっしりと、細かい字で、本書の内容が記載されているのだ^^; 肉眼で見ただけでは判別できず、たんなる地紋としか見えない。

天才の時間
天才の時間
竹内薫/著
NTT出版
1600円+税