「へんな数式美術館」は、世の中のへんな数式を集めて、その不可思議さと美しさを鑑賞する本。もちろん、その数式の意味を竹内薫センセが、爺のような数学素人にも、なんとなくわかった気になるよう、噛み砕いて解説してくれる。
当ブログの過去記事「書籍:夜中に犬に起こった奇妙な事件」で紹介した「生き物の公式」も本書に掲載されている。
(※Flash8のソース:robert_may02.zip)
この式の不思議なところは、係数(γ)が「3.57」を超えると、とたんにカオス的なふるまいを見せることだ(過去記事のFlashの流用だが、今回は、数値設定のステップ数をちゃんと「0.01」刻みにした^^;)
なんで、これが「生き物の公式」なのかというと、ある年ごとの、ある生物の個体数(生息密度)を測ったとき、そこには、その年の気候とか、捕食者の数とか、さまざまな要因が関連する。それらの要因を差し引いても、個体数が変動することをロバート・メイが数理モデルとして提示したもの。誤解してほしくないのは、ロバート・メイは、ある特定の生物(蛾の一種)の個体数の増減をうまく説明できる数理モデルを提示したのだが、この数理モデルですべてを説明できるわけではない。でも、もっとも複雑なシステムである、生態系のしくみも、意外と簡単な数式で表すことができるかもしれない、という提示は興味深いよね。
「生き物の公式」は、「夜中に犬に起こった奇妙な事件」の中で、ほんの数ページで触れられているだけなので、詳しいことはわからなかった。でも、その後、たまたまテレビの「放送大学」で「数理モデルとカオス」の講義を見ていたら、ロバート・メイのモデルについて触れていた。爺は「放送大学」の学生ではないにもかかわらず、そのテキスト教材を注文してしまった^^;
数理モデルとカオス 丹羽敏雄/著 長岡亮介/著 日本放送出版協会 (放送大学教材) |
池の蛙や、昆虫など生殖行動が時期的に決まっている場合、個体数は時間的に連続するというより、離散的だ。ロバート・メイの数理モデルは、個体数を微分方程式で解くのではなく、ロジスティック差分方程式、あるいはロジスティック写像として捉える。
冒頭で紹介した差分方程式を、横軸に連続する係数(γ)をとり、下図の場合は(2~4)、縦軸に個体数(生息密度)をとる。係数(γ)の変化に合わせ、個体数(初期値:0.3)を入れ100世代分の計算する。最初の50世代くらいまでは、個体数が定まらないので除外し、51~100世代までの個体数を表示する(画面上に点を打つ)。すると、下図のようになる。これは画像ではなく、Flashで計算して、描画している。
(※Flash8のソース:robert_may03.zip)
《参考》C言語による最新アルゴリズム事典
C言語によるアルゴリズム事典 奥村晴彦/著 技術評論社 |
もっと詳しく知りたい人は、爺の説明を聞くより、以下のサイトを訪れてみよう。カオスシミュレーションが紹介されており、「ロジスティック写像の時系列」と「ロジスティック写像の分岐図」に詳しい解説がある。
また、この数式は、ロバート・メイの論文、ネイチャー誌(1976年)に発表されたもの。
Robert M. May "Simple mathematical models with very complicated dynamics," Nature, vol.261, 459-467 (1976).
The Theory of Chaotic Attractors 出版社:Springer(2004/01) |
現在、入手可能なものとしては、上記の本がある。ロバート・メイの論文が掲載されているのは、本書の85~93ページなので、アマゾンの「なか身!検索」では、見ることができないが、Googleの学術論文検索「Scholar」で検索すると、見ることができる。(「読むことができる」としなかったのは、爺の語学力と理解力の限界をものがたっている><;)
へんな数式美術館 ~世界を表すミョーな数式の数々 竹内薫/著 技術評論社 (知りたい!サイエンス36) |
夜中に犬に起こった奇妙な事件 マーク・ハッドン/著 小尾芙佐/翻訳 早川書房 |