■書籍:算数でホラー(パラドックス事件簿)

「算数でホラー」は、小島寛之センセの児童向けの物語だ。「パラドックス事件簿」シリーズは3冊あって、そのうちの1冊(私は、まだ、この1冊しか読んでいない)。
まずは、「算数でホラー」から問題をひとつ引用させてもらおう。

『神の大陸は、かつて、こんな場所にあったという。まず、神はそこから南に百歩分歩き、そしてそこで東へ曲がって百歩歩き、さらにそこから北へ曲がって百歩分歩いた。すると元の場所に戻ってきた。このような場所は世界広しといえど、この地にしかない。神はこの神聖なる場所で熊を見つけ、念力を放ってしとめたという。この熊は何色であろうか』

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パラドックス探偵団は、自分を神さまの直接の子孫で超能力を使えるという、ペテン師と対決するのだけれど、それには、この「謎」を解かなければならない。

勘のいい人なら、この条件を満たす出発点は「北極」だということに気づいたはずだ。北極にいる熊といったら「白クマ」だよね。北極点では、どちらを向いても「南」になる。百歩進んで、「東」に百歩進むとき、北極点の近くでは、直線ではなく、円弧を描くようになるわけね。百歩ではなく、もう少しスケールを拡大したのが下の図だ。

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東京は、だいたい北緯35度、サンフランシスコは北緯34度なので、北極点から、およそ6000キロ南下すると東京。そこから東へ8600キロ進むと、サンフランシスコで、さらに北へ6000キロ進むと、北極点に戻るわけ。

私たちは「地図」というと、東西南北に移動できる平面なものを思い浮かべる。知識として地球は丸いということは知っているけれど、普段、球の表面にへばりついて生きてるという感覚はない。

ちなみに、18世紀末のフランスで、メートル法の基準を定めたとき、北極点から赤道までの距離を1万キロメートルとし、その1000万分の1を「1メートル」とした。つまり、つまり、地球の円周(子午線の長さ)を4万キロメートルとした。当時の測量技術には限界があって、現在、子午線の長さは4008キロメートル。赤道の長さは40075キロメートルだ。何が言いたいかというと、赤道は緯度「0」、北極点は北緯90度なので、北極点から東京までの距離は「10000*((90-35)/90)」で計算できるわけ。

話を戻すと、問題の答えが北極にいる「白クマ」と気づいただけでは、まだペテン師をやっつけることはできない。ペテン師は「このような場所は世界広しといえど、この地にしかない」と豪語するが、じつは、この条件を満たすところは、無限に存在するのだ。たとえば、出発点を「東京」にしてもいい(あ、進む距離を「100歩」ではなく、自由に設定できる場合ね^^;)。

これ以上書くと、ネタばらしになっちゃうので、気になる人は、「算数でホラー」を読んでほしい。

hiroyukikojimaの日記:数学推理もの
http://d.hatena.ne.jp/hiroyukikojima/20080511

算数でホラー
「算数でホラー」
(パラドックス事件簿)
著作/小島寛之
発行/小峰書店
価格/1300円+税
(1999年12月初版発行)