■コマネチ大学数学科79講:ハミルトン

 ハミルトンは、10歳のとき、10か国語を話したという。そんな天才の頭の中はどうなっているのだろう。脳みそが頭からハミルトン? 意味不明のまま「たけしのコマネチ大学数学科」第79講。

問題:9×9の盤面(マス目)に1個所だけ障害物(龍の駒)が置いてある。それ以外のすべてマス目を一筆書きの要領で、移動することができるか? できないか? その理由を述べよ。移動は上下左右のみ、斜めは移動できない。どのマス目からスタートしてもよい。

【遊び方】方眼のマス目では味気ないので、コマ大生にならい、将棋の盤面にした^^; どこからスタートしてもよいので、最初に「歩」の駒をドラッグして、好きな位置にドロップしてから、キーボードの方向(矢印)キーで移動してほしい。

 結論から言っちゃうと、今回の問題は「できない」が正解。問題は、その理由。どうやって証明するか……だ。

 コマ大生は、将棋の盤面で考え「龍」が置かれている位置は「3四」なので、桂三枝(男)はできない。「4四」はCCガール(女)なのでできる……というように、すべての盤面を男女(偶奇)に分け、男ならできる。女ならできないとした。ガダルカナル・タカから「4四」の時点で、「宍戸錠」がいるじゃないかと論理の穴を指摘された。

 マス北野は、9×9でマス目は81個。その内、1個所は「×」なので、80個。偶数ならできない。奇数ならできる。また、オイラーの一筆書きができるルールを思い出し、理屈をつけたが、いまいち説得力がなかった。

 木村美紀さんと松江由紀子さんの東大生チームは、9×9の盤面をいくつかのブロックに分け、スタート地点から対角線の位置に移動できるかどうかを考えた。たとえば、左上をスタート地点とすると、緑色の領域では、対角線の移動が可能だ。そして、水色の部分でも対角線の移動が可能。すると、残りは、オレンジ色の部分になる。この部分の障害物の位置が「3マス+4マス」で奇数になる場合は、「できない」、たとえば「3マス+3マス」で偶数になれば、「できる」と考えた。

20080216_00

 これって「偶奇」を「男女」になぞらえた、コマ大数学研究会の考え方と、説明の仕方が異なるだけで共通していると思う。むしろ、盤面の障害物のすべての位置で「できる」「できない」を証明したコマ大生のほうが優れていると感じるのは、私だけかなぁ……。番組のエンディングでダンカンがその苦悩を吐露していた。「2六」の位置で女性の名前がなかなか思い浮かばない。そのとき「2六」を、フロ……風呂と読むと、すぐに「由美かおる」で埋めることができたという。問題に真摯に取り組む姿勢もすばらしい^^;

 で、竹内薫センセの「美しき数学の時間」。もともと9×9のマス目は81個ある。マス目を白黒の市松模様に塗り分けると、白が41個、黒が39個になる。というのも、「赤」のマス目は、本来、黒のマス目だからだ。この2個の差が重要。

20080216_01

 前後左右で移動するとき、スタート地点がどこにあっても、市松模様に塗り分けられたマス目を移動するとき、「黒→白→黒→白」というパターンか、「白→黒→白→黒」というパターンになる。

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 どこからスタートしても、この2個の差を解消することはできないんだよね。今回の問題に似ている、次のような問題がある。

 道場の床は8×8、ただし四隅の対角に柱が2本ある。つまり(8×8-2=62)、たたみ31畳ぶんの広さだ。これも、道場の床を市松模様に塗り分け、畳も白黒に塗って考えるとわかりやすい。秋山仁センセの「数学流生き方の再発見」という本では、多項式による証明を行っているが、おもしろいのは「フーテンの寅さん」なら、この問題をどう解くか……というところ。寅さんは、31人それぞれが、たたみ一畳分の布団を持ち寄り、それを敷くことを考える。どのような敷き方をしても、片方が頭で片方が足になる。だが、最後のひとりは頭と足が別々になってしまう。寅さん曰く「可哀想だが、その御仁には止まり木にでもとまって寝てもらうしかネェ」

≪出典≫
数学流生き方の再発見」秋山仁/著
プログラマの数学」結城浩/著

 ところで、今回の演題は「ハミルトン」。ウィリアム・ローワン・ハミルトン(1805 – 1865)は、イギリスの数学者。幼年期より、その神童ぶりを発揮したそうだが、晩年は、誰からも理解されない「四元数」の研究にとり憑かれ、アルコールに溺れていたとのこと。なんかアルコール中毒という点に親近感を感じるなぁ^^; そんなハミルトンだけど、生涯に一度だけ、ゲームのオモチャを売り出したそうな。それが「正12面体の頂点巡り」。

 上の図は立体である正12面体を上から「ぐちゃ」とつぶし、2次元の図形にしたと考えてほしい。任意の頂点から出発し、各頂点を一度だけ通り、出発点に戻る、一筆書きの問題だ。全部で30通りの巡回コースがあるが、本質的には同じもの。

≪出典≫
ゲームにひそむ数理」秋山仁・中村義作/共著

※「コマネチ大学数学科78講:おしどり問題」で取り上げた「飛び石問題」も載っているよ。

≪今回制作したFlashのダウンロード≫
comaneci79.zip(※Flash8)

4627016514
ゲームにひそむ数理―ゲームでみがこう!!数学的センス
秋山仁・中村義作/共著
森北出版
定価(本体2200円+税)
ISBN4-627-01651-4

“■コマネチ大学数学科79講:ハミルトン” への3件の返信

  1. コマネチ大学 #78

    コマネチ大学 #78
    たけしのコマネチ大学数学科#78  2008年2月14日 深夜OA
     
     
    今回のテーマは、
    「ハミルトン」
     
     
    【定番本】
    コマ大数学科
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  2. はじめまして
    いつも、フラッシュで遊びながら、楽しませていただいております。
    最近の「コマ大」は、こう離散数学的な内容が多いような気がしますね。
    こういう離散数学的な問題は、計算より言葉によるアルゴリズムが重要な分、定理化・公式化しにくジャンルなんですね。
    その分、解答を見ると、「そんな解き方なのか」といつも驚かされます。
    私自身、数学は解法暗記で育った人間なので、こういう問題は、いささか不得意です。
    更新楽しみにしてます。

  3. オイラーさん、コメントありがとうございます。
    またオイラーさんの「遊びの数学を本気で楽しむ」にガスコン研究所のリンクを張ってくださり、感謝です。
    コメントの署名をクリックすると、オイラーさんのブログへリンクしますが、気がつかない人もいるでしょうから、あらためて紹介。
    「遊びの数学を本気で楽しむ」
    http://enjoymath.blog71.fc2.com/

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