脳のからくり

脳のからくり―わくわくドキドキする脳の話 Book 脳のからくり―わくわくドキドキする脳の話

著者:茂木 健一郎,竹内 薫
販売元:中経出版
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「ペンローズの量子脳理論」(竹内薫/訳・茂木健一郎/解説)は、なんだか難しそうだなぁ……という印象だったので、私にも理解できそうな「脳のからくり」(竹内薫/著・茂木健一郎/監修)を読んだ。

 この本は、脳科学の最先端の研究を非常にわかりやすい言葉で解説してくれる。片や「たけしのコマネチ大学数学科」の講師としてお馴染の竹内薫センセだし、片や「アハ!体験」や「クオリア」で「世界一受けたい授業」やNHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」の茂木健一郎だ。このコンビの本なら、おもしろくないはずがない。

 脳のしくみを解説する部分もおもしろい。とくに「脳の視覚」の章で、「網膜絵画」(網膜に映った映像をできるだけ忠実に再現しようとした写実的絵画)にも、ブリューゲルとレンブラントの二通りのアプローチがあるし、「モジュール型絵画」では、ピカソやモネなどの絵画を紹介して、視覚というものを脳がどう処理しているのか、脳の機能として分類し、解説しているのが興味深い。

 しかし、メインは「脳」と「意識」の関わりだろう。「意識」というものを、最先端の脳科学は、どこまで迫ることができているのか。有機物質の塊から「生命」の誕生へ。ニューロンの情報処理から「意識」の誕生へ。そこには「男と女の間には、深くて暗い川がある~♪」以上の超えられない川があるのだ。研究者たちは「エンヤコラ今夜も舟を出す~♪」と研究に勤しむ(by.野坂昭如)。

 で、「脳のからくり」に戻ると、やはり「この木、何の木、気になる木」なのは、ペンローズの「量子脳」の部分だ。ペンローズの仮説とは……。

(ニューロンの骨格だと考えられていた)マイクロチューブルでは、量子力学の波束の収縮が起きており、それが意識そのものなのである。

 さっぱり、わから~ん;;

 やはり、「ペンローズの量子脳理論」を読まなくてはならないのだろうか……。

 「脳のからくり」は、わかりやすい一般書であるし、多くを求めるのは、筋違いというものだ。数ページの解説で「ペンローズの量子脳理論」を理解したとなると、ペンローズの立つ瀬もないだろう。かといって量子力学を解説されても、きっと、理解できないと思う。要は「クオリア」とか「意識」とかは、計算不能ってことだ。

 竹内薫センセは、この本で「すべての物質に意識が宿る可能性がある」と説く。たとえ、それが路傍の石であろうとも。

 東洋思想(仏教)では、八百万(やおよろず)の神という考え方があり、すべてのものに神が宿っている。神さまのインフレーション理論というか、このへんが一神教のキリスト教やイスラム教とは異なる文化だ。神を「宇宙を支配する法則」とするならば、路傍の石にまで及んでいるというのは、極めて整合性のある話のようだが、それは神の意思であって、石の意思ではない。

“脳のからくり” への2件の返信

  1. ご紹介いただき、ありがとうございます!
    意外とうまく書けたと思ったわりには、期待ほどには売れなかった本なので、読んでいただけて、嬉しいです。
    116ページの図の左の入力は、真ん中が白(つまり0)です。
    106ページの囲みの1と2の「味の素」と「ギャバ」は取ってください。誤植です。
    (ちなみに、この本は、11月に新潮文庫に入る予定です(汗))

  2. 「ペンローズの<量子脳>理論」が文庫になったので、さっそくアマゾンで買いました。まだ読んでませんが、楽しみです。

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