第14回:アルキメデス

 今回は、自らが「アキルメデスフェチ」と認める、中村亨センセが講師を務める「たけしのコマネチ大学数学科」の第14回。

Ex_1401  問題は、「立方体の各面に垂直な方向に正四角柱の穴をあけた立体をA、B、Cの3点を通る平面で切ったとき、切り口に現れる図形を描きなさい。ただし、各穴の正方形の一辺は立方体の一辺の1/3とする」

 解答図も「Shade」で描こうと思ったが(完全に「エクセル」は忘れ去られている)、老人性痴呆症のため、断念。降参です。

 んで、この図形を見て、数年前、朝日新聞の1面を飾った記事を思い出した。それは「エネルギーの空中採取可能? 電磁波を蓄える夢の宝箱開発」という記事。

 なにぶん、昔の記事なので「asahi.com」には、データが残っていない。ネットで調べてみると、「おもしろ実験室《フジカット有限会社》」に記事の全文が残されていた(表示されるページの下のほう)。

Ex_1402  記事を要約すると、フラクタルな穴のあいた立方体に電磁波を投射すると、投射をやめたあとも電磁波が1000万分の1秒ほど、内部に留まるというもの。名づけて「フォトニックフラクタル」。これが、どんなにスゴイことかというと、朝日新聞の見出しにあるように、空中からエネルギーを採取できるということ。携帯電話の充電は必要なくなるし、光だって無数のフラクタルな穴に閉じ込め、必要なときに取り出すことができる(電気を蓄える「電池」ならぬ「光池」)。と、今世紀最大の発見と、朝日新聞の1面で大々的に紹介されたのだ。

 ところが、この世紀の大発見、ネットで調べてみても、その後、どうなったのかよくわからない。地道な基礎研究が進んでいるのかも知れないが、どなたか、ご存知なら教えてほしい。

Ex_1403  「フラクタル」といえば、「コッホ曲線」や「シルピンスキーのギャスケット」が有名だが、それを立方体にしたのが、「フォトニックフラクタル」だ。フラクタル図形は、細部を取り出したときにも全体の図形と相似しているのが特徴。究極の姿を考えると、2次元なのに面積がない、立方体なのに体積がないというようなおかしなことになる。次元数を考えると、とても中途半端な次元になる、不思議な図形なのだ。朝日新聞の記事を読んでも「フォトニックフラクタル」がどのように作用しているかは、依然不明でよくわからない。ひょとして、中途半端な次元に電磁波や光が吸い込まれちゃうのかぁ~と思いたくなる。

 「シルピンスキーのギャスケット」を正方形にすると、なんとなく、「曼荼羅」に似ているよね。イリア・プリゴジンは、「散逸構造」でノーベル賞を受賞した物理化学者だけど、最先端科学と東洋思想との類似性にも言及しているんだよね。この辺の話を膨らませると、竹内薫センセの「夜の物理学」という本にも言及したくなっちゃうけど、それは、またの機会に……。

 じつは、私、一時期、複雑系などの「ニューサイエンス」に凝っていたときがあって、フリーになって間もなく「日経BPデジタル大事典」に「複雑系」の記事を書いたことがある。興味のある方は「ガスコン研究所(本館)」の「複雑系の話」を見てね。