C014:アルキメデス

2006年7月21日

 今回は、自らが「アキルメデスフェチ」と認める、中村亨センセが講師を務める「たけしのコマネチ大学数学科」の第14回。


 問題は、「立方体の各面に垂直な方向に正四角柱の穴をあけた立体をA、B、Cの3点を通る平面で切ったとき、切り口に現れる図形を描きなさい。ただし、各穴の正方形の一辺は立方体の一辺の1/3とする」


 各辺が1の立方体をA、B、Cを通る平面で切ったときの断面は、一辺が√2の正三角形になることは容易に想像できる。問題はくり抜かれている穴の部分がどんな形になるかだ。


 切り口は穴の対角を通るので、図のように線で結ぶと1点で交わる。正三角形から3分の√2の正三角形を取り除くと、断面は三菱のマークのようになるんだね。


 コマ大数学研究会は、1個1万数千円もする四角いスイカをくり抜いて検証。図形問題が得意なマス北野はあっさり正解。東大生チームも正解だったが、スピードの点でコマ大フィールズ賞は、マス北野が獲得した。


 今回のお題は「アルキメデス」だが、アルキメデスは正多角形を組み合わせて作ることのできる立体を考えた。たとえば、正六角形と正五角形を組み合わせると昔のサッカーボールのような立体になる。これは、正20面体の角を切り落とすとできる。このような「アルキメデスの多面体」と呼ばれる立体は、全部で13個見つかっている。(※2012年10月:図版と本文を修正、加筆した)


 本題から外れるが、爺がこの図形を見て思い出したのは、数年前の朝日新聞の1面を飾った「エネルギーの空中採取可能? 電磁波を蓄える夢の宝箱開発」という記事。


 なにぶん、昔の記事なので「asahi.com」には、データが残っていない。ネットで調べてみると、「おもしろ実験室《フジカット有限会社》」に記事の全文が残されていた(表示されるページのかなり下のほう)。


 記事を要約すると、フラクタルな穴のあいた立方体に電磁波を投射すると、投射をやめたあとも電磁波が1000万分の1秒ほど、内部に留まるというもの。名づけて「フォトニックフラクタル」。これが、どんなにスゴイことかというと、朝日新聞の見出しにあるように、空中からエネルギーを採取できるということ。携帯電話の充電は必要なくなるし、光だって無数のフラクタルな穴に閉じ込め、必要なときに取り出すことができる(電気を蓄える「電池」ならぬ「光池」)。と、今世紀最大の発見と、朝日新聞の1面で大々的に紹介されたのだ。


 ところが、この世紀の大発見、ネットで調べてみても、その後、どうなったのかよくわからない。地道な基礎研究が進んでいるのかも知れないが、どなたか、ご存知なら教えてほしい。


 「フラクタル」といえば、「コッホ曲線」や「シルピンスキーのギャスケット」が有名だが、それを立方体にしたのが、「フォトニックフラクタル」だ。フラクタル図形は、細部を取り出したときにも全体の図形と相似しているのが特徴。究極の姿を考えると、2次元なのに面積がない、立方体なのに体積がないというようなおかしなことになる。次元数を考えると、とても中途半端な次元になる、不思議な図形なのだ。朝日新聞の記事を読んでも「フォトニックフラクタル」がどのように作用しているかは、依然不明でよくわからない。ひょとして、中途半端な次元に電磁波や光が吸い込まれちゃうのかぁ~と思いたくなる。


 「シルピンスキーのギャスケット」を正方形にすると、なんとなく、「曼荼羅」に似ているよね。イリア・プリゴジンは、「散逸構造」でノーベル賞を受賞した物理化学者だけど、最先端科学と東洋思想との類似性にも言及しているんだよね。この辺の話を膨らませると、竹内薫センセの「夜の物理学」という本にも言及したくなっちゃうけど、それは、またの機会に……。



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