C002:モンテカルロ法

2006年5月10日

 木曜深夜にフジテレビ系列の「数学バラエティ番組」としてスタートした「たけしのコマネチ大学数学科」。第2回の問題は「10分間のファッションショーで水着モデルが登場するのは1分間。しかも、ショーのどこで登場するかはわからない。カメラマンが会場に入ることのできる時間(撮影時間)も1分間。はたして、カメラマンが水着モデルを撮影できる確率は?」というもの。


 今回のテーマは「モンテカルロ法」なので、実際に「エクセル」で確かめてみよう。水着モデルが登場する時間は、0分から9分までの間(1分のショーが義務付けられているから最後の1分間は考えなくてもよい)となる。これはカメラマンが会場に入る時間にも言える。そして、モデルとカメラマンが同じ会場で出会うためには、ふたりの登場、入場時間の差が1分以内であればよい。


「エクセル」の関数で表すと、「水着モデル」の列には「=RAND()*9」、「カメラマン」の列にも「=RAND()*9」と入力(※RAND():0以上1未満の乱数を返す。引数はなし)。
「判定」の列には「=ABS(A4-B4)」と入力(※ABS(数値):数値の絶対値(相対的な差)を返す)。
セルの条件付き書式で「セルの値が」「次の値より小さい」「1」としてセルのパターンを設定すると、条件に一致したセルが色分けされる。「試みた回数」(セルC2)には「=COUNT(C4:C103)」とする(※COUNT(範囲):範囲内のデータ個数を返す)。
「撮影できた回数」(セルC1)には「=COUNTIF(C4:C103,"<1")」となる(※COUNTIF(範囲,条件):範囲内の条件に一致するデータ個数を返す)。

 ここでは、番組内で「軍団」が実際に検証した回数、100回を行う。オートフィルを使っても、100行分のデータを入力するのは大変なので、次の方法を試して欲しい。


1:「セルA4」をクリック。
2:「F5」キーを押す。
3:ジャンプ画面が開くので「参照先」に「B103」と入力。
4:「Shift」キーを押しながら「OK」ボタンをクリック。
5:そのままの状態で「=RAND()*9」と入力。
6:「Ctrl」キーを押しながら「Enter」キーを押して、入力を確定する。


 どうです? 水着モデルとカメラマンの100行分のデータが入力されたでしょ。「判定」の列も同じ方法で「=ABS(A4-B4)」を一括入力する。この方法なら、試行回数を「1万回」に設定しても大丈夫だ。


 結果は「たけし軍団」の答えと奇しくも同じ「23/100」となった。もちろん、「F9」キーを押して再計算をすれば、乱数は毎回違うので、結果は微妙に前後する。もっと試行回数を多くすれば次第と正解に収斂していくと考えられる。「たけし」の答えは「19%」。モデルが9分以降に登場することは考えなくてもよいことを見逃したようだ。非常に惜しい。正解は女子東大生の「17/81」。不等式「0<|x-y|<1」からグラフを用いて、モデルとカメラマンが重なる領域が撮影可能な確率と考え、計算により「17/81」を導き出した。


追記: Gascon | 2012年10月16日


 あらためて読み直してみると、マス北野や東大生の解法に触れておらず、これでは番組を見ていない人にはわからないよね。今さらながらだけど、ちょっと補足しておこう。


 「モンテカルロ法」は、ランダム法と呼ばれることもあり、コンピューターで乱数を発生させ、確率論的に近似値を求める手法。体当たりで問題に取り組むコマ大数学研究会の方法に似ているけど、疲れ知らずのコンピューターならば、何回もシミュレートすることで、だんだんと答えを収束させていくことも可能になる。


 上のFlashで、だいたい1万回くらい試せば(^_^;)、モデルとカメラマンが会場内で出会え、撮影ができる確率は、21%近辺だということがわかる。でも、数学的に正確な答えはわからない。そこで、モデルの登場時刻をX軸、カメラマンの入場時刻をY軸にとって(どちらでもかまわない)、同じくモンテカルロ法でランダムにXY座標に点を打つFlashを作成、撮影が可能のときだけオレンジ色で表示してみた。


 カメラマンは1秒以下のほんの一瞬でも、会場内でモデルと出会えれば撮影可能とする。たとえば、モデルが3分00秒(X=3)に登場したとしたら、撮影可能なカメラマンの入場時刻は2分00秒~4分00秒(2<Y<4)と、限りなく2分間の幅がある。Y<X+1とY>X-1で囲まれた領域が撮影可能範囲(ただし、0<X<9、0<Y<9)。上のFlashで試行数を充分にとれば、東大生の描いた「0<|x-y|<1」のグラフと同じになる。


 撮影が可能な確率は、オレンジ色の部分と全事象(9×9のマス目全体)の面積比で求めることができる。オレンジ色の部分は、9×9のマス目から、撮影不可な青いふたつの三角形の面積を引いたものだが、ふたつの青い三角形を合わせれば、8×8のマス目になる。つまり、オレンジ色の面積は、(9×9)-(8×8)=81-64=17 ゆえに、カメラマンが水着モデルを撮影できる確率は、「17/81」というわけだ。


 マス北野も東大生と同じくグラフを描いたが、モデルには必ず1分間のショーが義務付けられ、カメラマンも1分間の撮影時間を確保する必要があるため、モデルの登場時刻も、カメラマンの入場時刻も9分00秒を過ぎることはないという条件を見逃した。全体を10×10のマス目と考えたため、撮影可能範囲を「(10×10)-(9×9)=19」、撮影が可能な確率を「19%」(19/100)としてしまったのら。


 しかし、昔の記事が気に食わないからといって、いちいいち追記していたら、同じだけの時間がかかってしまうぞ。どーするんだ?>爺。


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